2014年4月2日水曜日

展開する家

まず最初に、TinyHouseに住む場合には割り切りが必要だ。生活への工夫を楽しむ余裕がない人にはお勧め出来ない。

ましてや、この住宅はそっくり折りたたんで引っ越しが出来ると言う常識外れの物。不動産である住宅と言う基本的な価値観から異なっている。床面積は内法で26m2と狭小。1~4名(4名はロフト付)のファミリー向け狭小住宅案。

もちろん仮設住宅や介護空間、サテライトオフイス、建築のリースや転用、ライフサイクルあるいは状況に合わせての部品交換なども視野に入れている。似たようなものに建設現場事務所等の「スーパーハウス」があるが性能が異なる。その内そんな境界線も怪しくなるとは思うが・・。

トラックなどで移動可能な住宅?(耐久消費財?)である。(今のところ「住宅」と言っておいた方が資金調達に有利だから・・)

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構造もただの木造ではなく構造計算で安全を確かめた上でのCLTとFRPが主体になっている。また、趣向性を避ける為、建物の色は白にしている。

太陽熱温水を主エネルギー源として補助的に発電を行う。それは太陽光発電効率はまだ日照エネルギーの20%以下であることと、電力供給はどこでも案外簡単と言う現実的理由。断熱性能はGWに換算して厚さ15cm~18cmだが、開口部性能は床比率から見ると大きいのでクワトロ(4重ガラス同等)に想定している。

また「狭さに対する心理対策」として、想定したポジショニングからの視野角による工夫で狭小感を削減させている。これは、通常の建築では見るためにしか使わない空間が大半であり、心理的にはそれが「必要な広さ」と認識している場合が多い。(おかしなことを言う?)

多くの場合、その見る為だけの部分に建設コストと維持手間を掛けていると言ってもよい。そして世の建築家の中、物・用途を撒き散らした床の機能の他は全ておまけの様に、見る事、つまりは良いデザインであらん事をサボっている人すらいる。

しかし、狭小住宅の場合はその無駄は許されない。いやむしろTinyHouseでは、それをはっきり認識して、経済的の他にも何重にもかかる無駄を省くのが目的でもある。しかしながら、理解できない人には必然としてそれは無理な話である。その対策としての工夫を行った。現実に物理的には26m2しかないので、広いとは感じないにしても不足ではないはずだ。

こういう場合の通常の手段は「皮膚感覚」を使う。いわゆる個人の多様な趣味性や思い入れの装飾類だが、それは住む人が醸成させていく物であって、我々が手を出す分野ではないので控えている。

特別な基礎も必要がない(簡易なコンクリート平板で可能)簡易な免震装置の上に置いている。弥次郎兵衛のようにキャンティレバーで上部を支え、展開した部分には地表からの支えはない。

部品パーツは少数の人間で組み立て可能なように全てを30kg以内に収めた。例えば組み立ては、素人が1・2人で一日の作業量と言う程度。

この地方では、ガラスは最低でもペアガラス以上必要。この設計ではクワトロガラス性能まで上げている。しかし大きなガラス面だと風圧に耐えるために厚いガラスにしなければならない。この例の小分けにしたガラスは25kg程度にしている。

ガラスは鉄・コンクリートの次に重たい素材なので大きなガラス面積にしてしまうと一人では組み立てられない事から小分けにした。勿論優先順位を「気候」と「組み立てられるか」に置いたものであるから、気候条件が温暖である地方向けならばこの倍ぐらいのガラス面積でも可能だと思う。

居間側。 TVはモニターアームブラケット。向きは可動。AV機器は床に置かず人間の動作範囲外の空間に設置する。


ソファの上部は、視野からも離れデッドスペースだ。





食堂テーブルは150cm×80cm
ベンチ座面は70cm×220cm。拡張可能なディベッド(来客用)でもある。下部は収納。


このような配列構成のバスルームは日本には少ない。一般には浴槽のスクリーンはシャワーカーテンだが、あえて独立性を持たせている。この浴槽の上部には太陽光温水設備の貯湯タンク約800Lがあり(構造的バランサーでもある)、暖房その他に使う予定。その為各個人の給湯には十分な量がある。浴槽の長さは150cm。外部へのドアもついている。(仮設事務所などの用途等)

温度設定の課題はあるが「お湯を共有しなくてもよい」と仮定すると、日本式の「洗い場」が必要かどうか。家族で使用となった場合を考慮しハードスクリーンとした。

また清掃をしやすくするために便器は洗面台と一体。巾木も単純化させている。

便器はこういう移動式の建物の場合には、接続工事不要の4名が常時使用可能な脱気型分離式コンポストトイレを新たに考案した(PATをどうするか思案中)。勿論水洗地域ならば水洗の方が馴染みやすい。

キッチン廻。冷蔵庫電子レンジ洗濯機その他の家電と収納を用意している。
魚の調理は電子レンジかフライパンを想定して、魚焼きグリルは無い。これは設置可能だが調理方法次第でスペースは無駄に増大するので、多くの調理道具が流通している事を一考させる為。


書斎からコクーン(寝室ユニット)側を見る。
コクーンはセミダブルサイズで必要な衣類その他の収納が備えてある。コクーンは防音・室温対策にも効率的。

このプランの場合は書斎を設け、SOHO事務などが可能な書籍量にしている。子供室にも対応できると思う。更に人員や収納物が多い場合は同じ程度の運搬ボリュームで、天井高1.3m程度のロフト付も考えられる。





書斎の椅子は畳などの収納箱(70×165)の上に座椅子(^^ゞ。それも殿さまのような肘掛付。

ここは窓辺で向きを変えて本を読むなど、姿勢を変えるのには座椅子の方がよさそうだ。

窓にはバッテンのブレース。これは構造上の制約。出来ればない方が良い。とりあえず人がその存在を意識しにくいクロームメッキかステンレスを想定している。

壁面のドアは洗濯機キャビネット。洗濯物を放り込むネットと各種の洗剤類、ハイアール(元サンヨー)の全自動洗濯機にサイズを合わせた。

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介護福祉法が橋本政権時に起案された時、日本では医療ベッドを求めたノマド(放浪)が始まると予想していたが、それが経済面の職業分野にも始まってきている。建築とは常に後追い、困って困ってどうしようもない頃に対応策が出来る。このノマド案の選択肢も相当先の話かもしれないが考えておくべき分野の一つ。

実はこれ、景気回復と言いながらもその恩恵から漏れ、衰退気味の地方の建設業者が地域を超えた企業活動を行う一つの案として考えた。日本の人口比で行くと0.24%のオホーツク地方。その建設技術は非常に高いのだが、現在それを広めようとの考えに至っていないので、ちとじれったい。

「生産して発送する」、これは他の業種には当たり前の事なのだが、建設業者には欠けている概念だ。

今や巨大企業となったプレファブメーカーの創世期。みんな最初は、今思えば鉄板とベニヤの本当にみすぼらしい小屋からスタートした。そしてスタートが早かった所だけが現ハウスメーカーになっている。「流通の中での建築」これもそのパターンなのかもしれない。

移動させる時の荷姿は関係した記事に載せている。興味があればメール。

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