2015年11月26日木曜日

まかない建築:雪にはナントか間に合った。

Google Earthからの自宅写真。老犬用の散歩道や老車トーラスが写っている。(南側に突き出た屋根部分は今回切断した)

家族の間で「屋根の上の黒い点は何だ?」と言う話題が以前からあった。

あったけれど、誰も見ていないので
1.カラスの死骸説
2.鉄板の変色説
3.フライングディスクがへばりついている説

など推論の域をでてはいなかった。

雨漏りを放置して35年。今回屋根に登ってみて判った。これはなんと水たまりだった。

長年水が溜まっていたので土埃が沈殿し黒く見えていた事が判った。水深25cmと言うほとんど「沼」のような物が出来ていたのには笑った。

いや、それにしても・・・・板金と言うのは何と柔軟な素晴らしい素材なのか。
いつからこうなのかはわからないが、それ以来幾度も積雪や豪雪があり厳しい凍結もあったのに、底抜けもせずに、これで雨漏り程度で済んでいたとは(笑)

数日前11月としては珍しい積雪が来たのだが、ちょうどその時、内部からの構造補強「沼の底上げ」工事が完了した。

危なかった・・・いや、今まで放置していて大丈夫だったんだからと、ウッスラ思っている。(笑)

2015年11月11日水曜日

まかない建築:建設当時の断熱材


35年経った内装をめくってみる


特大のバール。靴は安全靴。今日のオレはいつもと違うww.

天井の断熱材を落としてみる。昔はブローイング工法が無い代わりに、厚さ150mmと言うグラスウールもあった。これは250mm(100+150)。当時はグラスウールの質も悪いので、落しただけでゲヘゲヘになる。死にそうだww。



壁面の断熱状態。
ブロックは蓄熱材としての用途。
外断熱と言う言葉のない時代。

外断熱の先例にあるのは海外でもブロック造のみ。日本ではブロックの2重壁(キャビティウォール)。そしてそれには構造上からの冷僑と言う気になる所もあった。

更にブロック造は日本では海外以上の構造制限が有って大きな室内空間を採るには不向き。

そこで鉄骨構造となるのだけど、プレファブメーカーの様な軽量鉄骨ではブロックの重量を支えられないので重量鉄骨構造と言う選択肢。

設計を覚えたて2年。
ま、こんなものだったんです(笑)

この断熱材の入れ方、今ならお笑い物だ。

内部側から、
銀膜付き高密度グラスウール50
一般グラスウール100
外壁下地にスチレンボード20mm合板サンドイッチパネル。
その上にラスモルタル(サイディングも無かったんだってばww)

各性能は別にして、ザックリした断熱材の厚さは170mm。

35年前、灯油40円/L時代に計算したランニングコストとイニシャルコストの損益分岐点。
断熱材の厚さとしては現在でも通用するかもしれない。

だがこれには欠陥があった。
天井にはフィルムが入っているが壁面にはフィルムが入っていない。

これはもう、ヤラカシテいるww。
 
いやあたくし、いかに当時経験不足でもこの様な指示は致しませんのです。
その頃は地元建設会社の単なる下働き現場員。幾つかの現場が重なり、自分の住宅は後回しにせざるを得なかった事を思い出します。

職人さんも、銀膜付きグラスウール(お高いのですが間違っちゃったら意味がないww)という事と建物の気密とは、無関係という事をまだ知らなかったのでしょう。さらに下地分の隙間が空いているし、今ではあり得ない状況。この後10年ぐらいしてからようやく一般的に「気密が重要」となった。時代なんですね~。

今でも0.15mmを使っている。切断した物を立てかけて
自立するぐらいの強度がある。破れにくく、若干乳白なので判りやすいんです。
それに、どんなに強い気密テープにも絶対負けないww
でも、その頃から気密膜としては過剰なほど分厚い0.15mmを使っている僕としては、これはあり得ない。(気密性能は変わりないけれど、破れにくいのときちんとできているかのチェックがしやすい。しかし通常の5-6倍コスト高)。内部側フィルムの施工ミスの怖さを知ってたんですから・・。

これはもう僕の施工管理ミスですね。これが大敗の原因でした(笑)

まかない建築:木製建具

珍説:
1.アルミサッシ+内部木製窓(ガラス1枚)
2.プラスチックサッシ(ペアガラス)
寒冷地の住宅では基本的知識として、1より2の方が断熱性能が優秀。
もうこれは常識化された事なんだけど、前からちょっと疑わしいと思っていた。
現代ではこう言った性能を表示するにはQ値C値などを用いて、共有できるように「標準化」されてはいる。それには異論はないんですけどね。当たり前に、金をかければ高性能が手に入る。
そんなつまらない事はしたくないw

結論
これね、小さい窓ならば1の方が優秀なんですよ。(キッパリ断言!)
理由は枠。普通の木製窓でもプラスチック窓に全て負ける、とは限りません。
或る工夫をすれば、ローコストでそれを上回る事は十分可能です。
何々風などと言う様式インテリアデザインなどでは、やはり木製の出番です。


僕の住宅では、国産出始めのプラスチックサッシと、1.の木製とを付けて比較している。
当時、ドイツ・北欧の新製品と言えばプラスチック窓。
木製サッシはまだ開発されていなかった時代。
 
地元の建具屋さんたちの将来はどうなっちゃうんだろう。
今でこそ「車」が技術産業の頂点だが、その頃は建設が経済の先導を切っていた。そのような自分達の一角が崩れるような気がしていた。(今では業界そのものがメロメロだがww)

輸入建具が始まった時の頃だったので、一部採用して比較していたのだ。
(と言うより、お金も無かったしw)

ところで、35.年前の窓性能と、現代の窓では比較にならないほど上がったのかと言うとそうでもない。やはりこの地域に合った物はかなり高価で性能もそれほど満足いく物ではない。いや、数値は簡単にクリアできるけれど、それは地域のノウハウによる物ではない。

比較する条件まで考慮していなかったのは未熟だったが、どうやら建設当時の疑問に思っていた仮説は正しかったと思う。
もちろん改善すべき点は多々あるのだが、ようやく地元建具屋さんが、自信を持ってそれらの市場に競合しても大丈夫なノウハウが出来たのかなと思う。

2015年11月9日月曜日

まかない建築

料理の世界では修業中は「まかない料理」で腕を磨くのだろう。
建築だって同じこと。
だがすぐ結果が出る料理とは違い、経験豊富な師匠と呼べる人がいなかった分、時間がかかる。
分かってはいたが、この場合35年もかかってしまった事になるのか・・(笑)

現在住んでいる住宅は留辺蘂で就職していた時のもの。
この時の建築設計経験は実質2年そこそこ、27歳だった。
鉄骨ラーメン構造の計算も断熱構造計算も、一応これでやり方を覚えた。
と言っても、随分色んな所を間違えていた。
何といっても経験不足。
上司とうまくいってなかった事や自信過剰なのか、判らない事が判っていない時期だったのも起因して、誰のアドバイスも受けていない。
もちろん上手く行った事もあるが、反省させられる部分も多い。

■ザックリと失敗のまとめ
雨漏りを放置して35年。
築後、5年ほどで雨漏りが始まった。

自分で解体してみて判った事だが、一連の構造の傷みは、雨漏りが原因では無かった。
直接・間接的に沢山の要素が絡まっていた。

根源的な原因は小屋裏の湿気だった。
小屋裏の気積の少なさと換気不足、これに尽きるのだろう。
軽量な軸材での小屋組みと異なり、ビル物と同じ重量鉄骨構造。太物で構成されている事から、室内に梁型を組んで鉄骨に断熱を行った。
この際に、断熱材が小屋裏一杯まで届き、ご丁寧に軒先の先端まで入っていた。
これでは換気が出来ない。

今でこそ商品化し常識化しているが、この住宅の小屋裏換気手法として初めて「スリット換気」を考案した物件だったのだ。
うーむ、残念。施工する人に説明不足だった。
当時GW断熱材は質も悪く誰もが嫌う作業だったはず。
それでもここまで念入りに入っている事は相当気を使って施工した証拠。
そうか・・・これはもう僕の指示・伝達ミスだ。

鉄骨母屋のC形鋼が一様に腐食しているのは、間違いなく雨漏りではなく湿度である。
高湿度によって母屋の腐食からの強度低下。これによって片持ち梁の強度低下が起きた。

片持ち梁の強度低下から梁のクリープが起き、屋根材に引っ張り応力が生じ、強度低下したC形鋼のダメージを速めていた。
母屋C形鋼脱落した為、それを留めていたL型鋼のアングルピースがルーフィングと屋根板金に接触し雨漏りを起こし、板金に錆びを呼び穴をあけている。

結果、雨漏りは止まったか。
実はまだ止まっていない。
雨漏りとして落ちて来る水はルーフィングを伝って来る。
だから、しずくが落ちた真上に原因がある訳ではなくもっと水上にある。
しずくが落ちる部分はルーフィングに穴が開いているか、何かを伝って来たしずく。
沢山の水が落ちて来るからと言って、大きな穴だとは言い切れない。
いくつかの連続したピンホールからの水がルーフィングの上でまとまると言う現象もある。
とりあえず、屋根の補修材をイギリスから取り寄せたが、雨の日でも施工可能と言う事なので、雨が降った今日ようやく出番、初めて試してみた。
どうやらまだピンホールが残っているらしい(笑)

■面白かった現象
解体も一人でやって見る。
正直観察しながら解体するので、物の劣化や変化を見るたびに考え込んでしまう。
これでは能率が上がらない(笑)。人を頼んでやる規模の解体でもないし、危険度合いも十分承知。
一時期の勢いのなさ(いわゆる老化)も判っているので、のんびりやって見る。

1)木の方が変化が無い。
これも解体して判った事だが、当時はC形鋼と木下地をつなぐ金物のクリップ類は無い。
大工たちも思案してC形鋼に木を食わせそれを下地をつないだ。
しかし、C形鋼が錆びても木下地はそのままだった。
つまり同一の湿度の場合、木下地の方が影響は少ない。当然と言えば当然なのだが鉄>木の図式がうっすら有ったので、木下地の変化のなさに正直驚いた。

2)鉄も異方性強度材料?
また、木材の性質である木目繊維方向と直角方向の強度の違い(異方性強度と言う)は広く知られているが、これは鉄も似たような現象になる場合がある事が判った。
サンダーなどで切断してみて初めて分かった事だが、鉄が錆び始めるとてきめんに木材同様の軸方向強度とそれに直角方向の強度は変わってくる。
これは圧延等成型工程によるものだろうと推測する。
構造計算では鉄素材そのものは、強度の方向性が無く同一なのだが、特にプレート類は顕著に強度の方向性が現れる。
これは構造計算には出てこない(笑)

3)板金の強さ
昨今の建物の形状外周には、乾式建材のジョイントを隠す為、あるいは意匠上の為に板金や金物が配置されているが、これは思いの他強い。
強いと言うかしぶといと言うか、金物類に打ち込まれている釘類は錆びずに強度を保っている。
板金類が引っ張り強度には強い事は判っていたが、長尺平葺板金の一枚の成型分だけで2-300kgは耐えられそうだ。
勿論構造計算には出てこない部材なのだが、淀や破風の折り返しやつかみの補強板なども想像以上に強かった。
板金のみの構造モデルを考案してはいるが、本気でやって見るかとこれを体験して思った。

4)板金の弱さ
ある一定方向にはさみを入れると裂けた。それこそ裂きイカの様に(笑)
板金に強度の方向性があるとは・・・・これも圧延の影響なんだろう。
これも面白い。考えてもいなかったので構造モデルにはこれを加味する予定。
屋根に上がって板金をよく見ると沢山の筋や擦り傷。
折り曲げ成型加工時のローラー痕や施工中の傷が35年経つとダメージとして見えて来る。
ふと板金保証期間年数が頭に浮かぶ。なるほどね~、そう言う事か・・。

大まかだが、個別分野でまだまだ考えさせられる事があったので、不定期にぼちぼち書いてみる。