料理の世界では修業中は「まかない料理」で腕を磨くのだろう。
建築だって同じこと。
だがすぐ結果が出る料理とは違い、経験豊富な師匠と呼べる人がいなかった分、時間がかかる。
分かってはいたが、この場合35年もかかってしまった事になるのか・・(笑)
現在住んでいる住宅は留辺蘂で就職していた時のもの。
この時の建築設計経験は実質2年そこそこ、27歳だった。
鉄骨ラーメン構造の計算も断熱構造計算も、一応これでやり方を覚えた。
と言っても、随分色んな所を間違えていた。
何といっても経験不足。
上司とうまくいってなかった事や自信過剰なのか、判らない事が判っていない時期だったのも起因して、誰のアドバイスも受けていない。
もちろん上手く行った事もあるが、反省させられる部分も多い。
■ザックリと失敗のまとめ
雨漏りを放置して35年。
築後、5年ほどで雨漏りが始まった。
自分で解体してみて判った事だが、一連の構造の傷みは、雨漏りが原因では無かった。
直接・間接的に沢山の要素が絡まっていた。
根源的な原因は小屋裏の湿気だった。
小屋裏の気積の少なさと換気不足、これに尽きるのだろう。
軽量な軸材での小屋組みと異なり、ビル物と同じ重量鉄骨構造。太物で構成されている事から、室内に梁型を組んで鉄骨に断熱を行った。
この際に、断熱材が小屋裏一杯まで届き、ご丁寧に軒先の先端まで入っていた。
これでは換気が出来ない。
今でこそ商品化し常識化しているが、この住宅の小屋裏換気手法として初めて「スリット換気」を考案した物件だったのだ。
うーむ、残念。施工する人に説明不足だった。
当時GW断熱材は質も悪く誰もが嫌う作業だったはず。
それでもここまで念入りに入っている事は相当気を使って施工した証拠。
そうか・・・これはもう僕の指示・伝達ミスだ。
鉄骨母屋のC形鋼が一様に腐食しているのは、間違いなく雨漏りではなく湿度である。
高湿度によって母屋の腐食からの強度低下。これによって片持ち梁の強度低下が起きた。
片持ち梁の強度低下から梁のクリープが起き、屋根材に引っ張り応力が生じ、強度低下したC形鋼のダメージを速めていた。
母屋C形鋼脱落した為、それを留めていたL型鋼のアングルピースがルーフィングと屋根板金に接触し雨漏りを起こし、板金に錆びを呼び穴をあけている。
結果、雨漏りは止まったか。
実はまだ止まっていない。
雨漏りとして落ちて来る水はルーフィングを伝って来る。
だから、しずくが落ちた真上に原因がある訳ではなくもっと水上にある。
しずくが落ちる部分はルーフィングに穴が開いているか、何かを伝って来たしずく。
沢山の水が落ちて来るからと言って、大きな穴だとは言い切れない。
いくつかの連続したピンホールからの水がルーフィングの上でまとまると言う現象もある。
とりあえず、屋根の補修材をイギリスから取り寄せたが、雨の日でも施工可能と言う事なので、雨が降った今日ようやく出番、初めて試してみた。
どうやらまだピンホールが残っているらしい(笑)
■面白かった現象
解体も一人でやって見る。
正直観察しながら解体するので、物の劣化や変化を見るたびに考え込んでしまう。
これでは能率が上がらない(笑)。人を頼んでやる規模の解体でもないし、危険度合いも十分承知。
一時期の勢いのなさ(いわゆる老化)も判っているので、のんびりやって見る。
1)木の方が変化が無い。
これも解体して判った事だが、当時はC形鋼と木下地をつなぐ金物のクリップ類は無い。
大工たちも思案してC形鋼に木を食わせそれを下地をつないだ。
しかし、C形鋼が錆びても木下地はそのままだった。
つまり同一の湿度の場合、木下地の方が影響は少ない。当然と言えば当然なのだが鉄>木の図式がうっすら有ったので、木下地の変化のなさに正直驚いた。
2)鉄も異方性強度材料?
また、木材の性質である木目繊維方向と直角方向の強度の違い(異方性強度と言う)は広く知られているが、これは鉄も似たような現象になる場合がある事が判った。
サンダーなどで切断してみて初めて分かった事だが、鉄が錆び始めるとてきめんに木材同様の軸方向強度とそれに直角方向の強度は変わってくる。
これは圧延等成型工程によるものだろうと推測する。
構造計算では鉄素材そのものは、強度の方向性が無く同一なのだが、特にプレート類は顕著に強度の方向性が現れる。
これは構造計算には出てこない(笑)
3)板金の強さ
昨今の建物の形状外周には、乾式建材のジョイントを隠す為、あるいは意匠上の為に板金や金物が配置されているが、これは思いの他強い。
強いと言うかしぶといと言うか、金物類に打ち込まれている釘類は錆びずに強度を保っている。
板金類が引っ張り強度には強い事は判っていたが、長尺平葺板金の一枚の成型分だけで2-300kgは耐えられそうだ。
勿論構造計算には出てこない部材なのだが、淀や破風の折り返しやつかみの補強板なども想像以上に強かった。
板金のみの構造モデルを考案してはいるが、本気でやって見るかとこれを体験して思った。
4)板金の弱さ
ある一定方向にはさみを入れると裂けた。それこそ裂きイカの様に(笑)
板金に強度の方向性があるとは・・・・これも圧延の影響なんだろう。
これも面白い。考えてもいなかったので構造モデルにはこれを加味する予定。
屋根に上がって板金をよく見ると沢山の筋や擦り傷。
折り曲げ成型加工時のローラー痕や施工中の傷が35年経つとダメージとして見えて来る。
ふと板金保証期間年数が頭に浮かぶ。なるほどね~、そう言う事か・・。
大まかだが、個別分野でまだまだ考えさせられる事があったので、不定期にぼちぼち書いてみる。
建築だって同じこと。
だがすぐ結果が出る料理とは違い、経験豊富な師匠と呼べる人がいなかった分、時間がかかる。
分かってはいたが、この場合35年もかかってしまった事になるのか・・(笑)
現在住んでいる住宅は留辺蘂で就職していた時のもの。
この時の建築設計経験は実質2年そこそこ、27歳だった。
鉄骨ラーメン構造の計算も断熱構造計算も、一応これでやり方を覚えた。
と言っても、随分色んな所を間違えていた。
何といっても経験不足。
上司とうまくいってなかった事や自信過剰なのか、判らない事が判っていない時期だったのも起因して、誰のアドバイスも受けていない。
もちろん上手く行った事もあるが、反省させられる部分も多い。
■ザックリと失敗のまとめ
雨漏りを放置して35年。
築後、5年ほどで雨漏りが始まった。
自分で解体してみて判った事だが、一連の構造の傷みは、雨漏りが原因では無かった。
直接・間接的に沢山の要素が絡まっていた。
根源的な原因は小屋裏の湿気だった。
小屋裏の気積の少なさと換気不足、これに尽きるのだろう。
軽量な軸材での小屋組みと異なり、ビル物と同じ重量鉄骨構造。太物で構成されている事から、室内に梁型を組んで鉄骨に断熱を行った。
この際に、断熱材が小屋裏一杯まで届き、ご丁寧に軒先の先端まで入っていた。
これでは換気が出来ない。
今でこそ商品化し常識化しているが、この住宅の小屋裏換気手法として初めて「スリット換気」を考案した物件だったのだ。
うーむ、残念。施工する人に説明不足だった。
当時GW断熱材は質も悪く誰もが嫌う作業だったはず。
それでもここまで念入りに入っている事は相当気を使って施工した証拠。
そうか・・・これはもう僕の指示・伝達ミスだ。
鉄骨母屋のC形鋼が一様に腐食しているのは、間違いなく雨漏りではなく湿度である。
高湿度によって母屋の腐食からの強度低下。これによって片持ち梁の強度低下が起きた。
片持ち梁の強度低下から梁のクリープが起き、屋根材に引っ張り応力が生じ、強度低下したC形鋼のダメージを速めていた。
母屋C形鋼脱落した為、それを留めていたL型鋼のアングルピースがルーフィングと屋根板金に接触し雨漏りを起こし、板金に錆びを呼び穴をあけている。
結果、雨漏りは止まったか。
実はまだ止まっていない。
雨漏りとして落ちて来る水はルーフィングを伝って来る。
だから、しずくが落ちた真上に原因がある訳ではなくもっと水上にある。
しずくが落ちる部分はルーフィングに穴が開いているか、何かを伝って来たしずく。
沢山の水が落ちて来るからと言って、大きな穴だとは言い切れない。
いくつかの連続したピンホールからの水がルーフィングの上でまとまると言う現象もある。
とりあえず、屋根の補修材をイギリスから取り寄せたが、雨の日でも施工可能と言う事なので、雨が降った今日ようやく出番、初めて試してみた。
どうやらまだピンホールが残っているらしい(笑)
■面白かった現象
解体も一人でやって見る。
正直観察しながら解体するので、物の劣化や変化を見るたびに考え込んでしまう。
これでは能率が上がらない(笑)。人を頼んでやる規模の解体でもないし、危険度合いも十分承知。
一時期の勢いのなさ(いわゆる老化)も判っているので、のんびりやって見る。
1)木の方が変化が無い。
これも解体して判った事だが、当時はC形鋼と木下地をつなぐ金物のクリップ類は無い。
大工たちも思案してC形鋼に木を食わせそれを下地をつないだ。
しかし、C形鋼が錆びても木下地はそのままだった。
つまり同一の湿度の場合、木下地の方が影響は少ない。当然と言えば当然なのだが鉄>木の図式がうっすら有ったので、木下地の変化のなさに正直驚いた。
2)鉄も異方性強度材料?
また、木材の性質である木目繊維方向と直角方向の強度の違い(異方性強度と言う)は広く知られているが、これは鉄も似たような現象になる場合がある事が判った。
サンダーなどで切断してみて初めて分かった事だが、鉄が錆び始めるとてきめんに木材同様の軸方向強度とそれに直角方向の強度は変わってくる。
これは圧延等成型工程によるものだろうと推測する。
構造計算では鉄素材そのものは、強度の方向性が無く同一なのだが、特にプレート類は顕著に強度の方向性が現れる。
これは構造計算には出てこない(笑)
3)板金の強さ
昨今の建物の形状外周には、乾式建材のジョイントを隠す為、あるいは意匠上の為に板金や金物が配置されているが、これは思いの他強い。
強いと言うかしぶといと言うか、金物類に打ち込まれている釘類は錆びずに強度を保っている。
板金類が引っ張り強度には強い事は判っていたが、長尺平葺板金の一枚の成型分だけで2-300kgは耐えられそうだ。
勿論構造計算には出てこない部材なのだが、淀や破風の折り返しやつかみの補強板なども想像以上に強かった。
板金のみの構造モデルを考案してはいるが、本気でやって見るかとこれを体験して思った。
4)板金の弱さ
ある一定方向にはさみを入れると裂けた。それこそ裂きイカの様に(笑)
板金に強度の方向性があるとは・・・・これも圧延の影響なんだろう。
これも面白い。考えてもいなかったので構造モデルにはこれを加味する予定。
屋根に上がって板金をよく見ると沢山の筋や擦り傷。
折り曲げ成型加工時のローラー痕や施工中の傷が35年経つとダメージとして見えて来る。
ふと板金保証期間年数が頭に浮かぶ。なるほどね~、そう言う事か・・。
大まかだが、個別分野でまだまだ考えさせられる事があったので、不定期にぼちぼち書いてみる。
0 件のコメント:
コメントを投稿