2012年5月5日土曜日

恩人の葬儀

連休間もない日に記事を読み、次の日即その街へ・・。
慌てていたので、日時を間違った。
一日早かった。


僕が脱サラをするきっかけとなった人。
経済的には成功しているのにとにかく飾らない。僕が行くと「ちょっと見てよ、俺の車今度発売のシーマにしたんだ!、いいだろう。」と見せびらかす。

通常の場合こういう時、こちらの寂しい経済状況と相手の経済状況との格差を感じて、どこか不快感や嫌味な感じを持つ事が多いのだが、この人の場合は全く違った。

「設計屋は金持ちの財布の中身をかすめ取る商売」と揶揄される様に、その後も全国で沢山の出会いがあったが、このような人にはあったことがない。むしろ正反対だった。

普通はある、浅ましい自慢の裏の「相手と時と場所をわきまえない力の誇示」が感じられない。
とにかく無邪気なのだ。
子供がお菓子をもらったぐらいの、あっけらかんとした喜びようなのでこちらが照れるぐらい。
こんなに喜ぶのなら仕方がないと感じた。

ある冬、しんしんと降る雪の日、訪問するとたった一人で駐車場を除雪している。
社員は手伝おうともしない。聞くと呆れ顔で「うれしいんだよ、新しい除雪機が・・・」と。

窓の外では雪まみれになって社長が一人。雪遊び状態。
そんな社長の様子を数人の社員が窓際に見に来る。みんなもニコニコ満足そうだった。
楽しそうにしている社長を見て「あれが俺達の社長サ」といった感じの社員。

当時僕は億単位のノルマを抱えた営業マン。仕事上の尖っていた気分が一気に溶けた。

平穏そうに見えて、新しい事柄など毎日起きるのだが、そういう中で飄々と喜びを見出している、そう言う人だった。

「きちんと仕事をやって適正な利益を得て、協力してくれたみんなにちゃんと礼をして税金を沢山払う。不要な節税などしない。それが長い目で見れば一番いいのさ。」これが信念だった。
参った。それを実践できている事にさらに参った。ここの社員になりたいと思ったほど・・・。

それは当時も今もこの会社の社風でもある。

ある日「俺の家、描いてみ?」それまでは営業職だったのだがその一言を掛けてもらったお陰で、脱サラを決めた。どうしても描きたかったのだ。社長住宅とその後の社屋の設計をもらった。どちらも大型物件。

さらに紹介客をもらい数年間その地方には非常にお世話になった。その恩人に対しての不義理はすべてこちらの要因。実にいろんなことがあった。もっと!上へ!。今思えば外部の目でしか見られなかった若気の至り。この社長が持っていた信念、内部の目が僕に欠けていたと思う。


うかつに一日早く来て、10本近くの思い出の建物を見て回りながら色々思い出す。と言っても、そういう思い出の大半以上はとにかく反省したり恥じ入ったり。

そうか、社長。いや、会長。いや宮田さん。
一日早く呼びつけ・・・・まいったね。

最後まで、ありがとうございました。

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