2015年9月4日金曜日

友人逝く

詳しい事はまるで知らされていないのだが、地方紙で友人の葬儀欄を見た。

逝きやがった。

数々の破天荒なエピソード。書き出せばきりがない。
楽しい奴だったが、どこか破滅的な匂いのする奴だった。

最後に逢ったのはいつだったか・・・・。
どう言う所できっかけが有ったのか思い出せないが、とにかく久々だったので別れがたく、近くの国道沿いのファストフード店で小一時間話をした。

ソレ以降の事、今はどこで何をしているのか、前を向いているのか・・。
聴きたい事は山ほどだったのだが、少し寂しげな奴の笑い顔を見ていると、聞き出せなかった。
 
それでも「大丈夫だ、建築の仕事してるよ」と聞いて安心しようと思った。
それから10年は経っている。


最初の出会いは、僕が流通も覚えたいとして建材屋に入ってた頃の32年前。
石膏ボードを運んでいた僕に現場監督が「お前が杉本か」と声をかけて来た。
「資格持ちが何やってるんだ、あとでちょっと来い」と言うのがきっかけ。

ある日「分譲マンションのモデルルームにちょっと来い」との電話が有った。
行くとスーツ姿にネクタイだ。奥まった部屋から妙な声がする。

「暇で仕方がないのでポルノビデオ見てたんだ。一緒に見よう」

そう言いながら冷蔵庫からビールを出してきた。午前11時の話。
建材屋と言う立場、客の好意はむげに断ってはならず、退屈なビデオは5分で消し、結局夕刻まで建築談義で飲んだ。その間、双方の会社では、奴も僕も行方不明。(昔の事よ)



奴はラリーのライセンス持ちだった。一度だけ同乗した事がある。リミッターを、走行中に急ブレーキがかかると危ないからと、外している小型車でも240km/h以上で爆走できる事を初めて知った。

取り締まり中のパトカーも諦めて追跡してこない車内では、「今スピードを落とさないとサイドブレーキを引くぞ!」「そんな事をしたら事故るぞ、スギ、死にたいのかよ」「いや、お前いい加減にしろよ、本当に引くぞ!」そんなやり取りの中、僕の真剣さに20km程走った所でようやく100km/h程度まで落とした。ゆっくりとした感じにホッとした。

「これじゃ捕まっちまうだろ・・・」と、弱々しくつぶやくのを聞いて、コイツの車には2度と乗らないと決めた。


外圧でツーバイフォー工法が導入された時代。僕たちは真っ先にマスターした。
奴はオーソドックスにマニュアル通りにやっていたし、独立した僕は工法のCAD化応用を始めていた。お互いそれからの仕事にも自信を持っていた。
その後奴も独立し順調そうに見えた。だが上手くいかなかった。
僕もバブル崩壊で本州方面物件は軒並みやられた。
奴に数件紹介した工事は、直接の工事には無関係だったのだが僕も後始末をした。
とにかく苦しかった。僕はこらえる事が出来たが奴は・・・・。

その後色んな噂話を聞いた。
車のまま電柱に登ったとか、自転車で車のショールームに飛び込んでみたとか・・。
でも、逢えばまた建築談義で盛り上がるだろうと思っていた。
どこかで奴なら好きな建築をやっていると・・・。



思っていたほど寂しくはない。奴はそれほど印象に残っている。

ps
これを書いた1時間後、来てたみたいだ。
わかった、明日顔を出す。

1 件のコメント:

hypermod さんのコメント...

気をつけて行ってきてください。